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物言う株主

コスモエネルギーホールディングスに対する社外取締役選任要求、フジテックの社長再任議案に対する反対、キヤノン御手洗CEOの取締役再任議案で約50%が反対など、最近いわゆる「物言う株主」の活動が活発化し、クローズアップされているような気がします。この点について私は色々思うところがありますが、基本的には「賛成」です。全面的に賛成と言えないのは、物言う株主の多くが金融系のプレイヤーであるため、事業面の状況を理解せずともすれば数字に依拠しすぎた提案になっている可能性がある点、日本経済の根源的な地盤沈下により海外のプレイヤーが参入する余地が生まれ、そのことが物言う株主の存在感が高まる一因となっている点、などの理由があるからですが、これらの点を踏まえても、物言う株主が伝統的な日本企業に対して刃を突き付けることは、短期的には痛みを伴うかもしれませんが、長期的に見るとその会社の生産性向上に繋がる可能性が高いと考えます。

まず東証上場企業の約6割がPBR1倍割れという現状は、色々な事情があるとは思いますが、約6割の上場企業が純資産以上の価値を付加できていないと株式市場から判断されている、ということですので、これらの会社の経営者は責任を問われて当然であると思います。そもそも株式会社は所有者である株主がより会社の価値を高めるため、経営者に会社の舵取りを委託するという仕組みであるところ、日本企業は関係の深い取引先同士で株式を持ち合ったり、お国柄株主が権利を主張することが一般的でないなどの側面もあり、特に上場企業の場合は「会社は働いている従業員のもの」という価値観が定着し、株式会社の仕組みがかなりねじれたものになっている印象です。その結果として会社の意思決定が社内・従業員向けのものとなり、社外・市場の意見よりも社内・従業員の意見が優先され、危機感を持たずに慣れ合いの意思決定を続けた結果が現状であるとすれば、多少荒っぽいやり方でもそこにメスが入り、経営陣が危機感を持つことが、会社の改善に繋がるのではないかというのが私の意見です。

最近ビジネスに限らずスポーツなど色々な業界で、「日本人の議論しない価値観が生産性を損ねている」という意見が出てきています。この議論しない価値観の根本には、日本が単一民族国家であり、「基本的に自分の意見はみんなと同じものである」という意識が根強くあることが大きく影響しているのではないかと思います。また最近「多様性」という言葉がビジネスでも頻繁に出てきますが、これは「女性役員を増やす」などの形式的な措置を取ることで多様性が担保されるような単純な問題ではなく、日本人の国民性と相反する価値観を取り入れるという話なので、かなり根深い問題ではないかと思います。個人的には価値観を「多様性」に全振りする必要は全くないとは思うのですが、「議論ができない」という国民性が生産性を損ねていることは間違いないと思いますので、物言う株主の提案がある程度合理的で、論理的に反論が難しいものなのであれば、それを感情的に撥ねつけるのではなく、ある程度受け入れることも視野に入れて、有機的に取り入れて改善の糧にしていく方が長期的には会社のためになるのではないかと思う次第です。

1件のコメント

  1. […] 以前のブログで「物言う株主の活動については基本的には賛成である」と述べましたが、今回の旧村上ファンドの提案は③を除いて多少無理筋かな、という印象です。それでもこのような提案を受けることでコスモの経営陣にも緊張感・危機感が高まりますので、中長期的な企業価値向上には寄与するのではないかと思います。果たして軍配はどちらに上がるのか、6/22の株主総会に注目したいと思います。 […]