松井秀喜さんが先日の講演で、「大谷選手以前に二刀流の発想がなかったのは、野球界の怠慢かもしれない」というコメントをされていたというニュースを見ました。以前から松井さんは言葉の選び方が秀逸だと思うことが多かったのですが、「野球界の怠慢」というコメントもまた非常に本質を突いていて、かつ状況を的確に表現している素晴らしい言葉だなと思いました。松井さんが言いたいのは、「可能性を限定せず、広い視野で物事を見て判断していくべきだ」ということだと思います。松井さんも名前を出していましたが、確かにかつての巨人には斎藤雅樹さん、桑田真澄さんなど投手でありながら野手顔負けのバッティングをしている選手がいましたので、この方達が二刀流に挑戦していたらどうなっていたか…というのは非常に興味深いところではあります。
ただし一方で、個人的な意見としては世の中の95%の人は「然るべきタイミングで可能性を限定していくべきだ」と思っています。「選択と集中」という言葉がありますが、普通の人は然るべきタイミングで自分の無限大の可能性を信じることを諦めて、比較的自分の筋がよさそうな方向性を選択し、そこにリソースを集中的に投入して競争に勝っていくことを目指すべきだと思います。以前のブログで、MECEが嫌いだという話をしましたが、これも同じ理由で、中途半端に本質ではない部分を拡散して検討することは、かえって本質的な部分をあいまいにしたり、本質的に検討すべき内容に投入するリソースを無駄に削減してしまうことになりかねないからです。特に中堅中小企業の場合、リソースがより限定的になる場合が多く、本質的ではない部分にリソースを投入する余裕はないはずですので、発想を拡散することに注力するよりも、「どのポイントにどのようにリソースを投入するかを決める」ということに注力すべきであると思います。
従って私は上記のように発想が見事なまでに小さくまとまっていますので、自分の会社を大きくしていくことにあまり興味がありません。「そういう現実的な発想が可能性を狭めている」という意見もあるかと思いますが、こればっかりはいい悪いではなく自分の価値観ですので、身の丈に合わないことはしないと決めています。クライアントの社長の方たちは、むしろ拡散的に「あれもやりたい、これもやりたい」という方が多いですので、そこに対して客観的に(むしろやや悲観的に)助言をする今の立ち位置が自分の性に合っているのかな、と思っています。