コスモエネルギーホールディングスと旧村上ファンド系の投資会社との対立が激化しており、6/22の株主総会が一つの節目となるとのことです。少し調べたところでは、投資会社がコスモ側に求めている論点は、①製油所の統廃合を含む抜本的取り組み、②再エネ事業子会社(コスモエコパワー)の分離独立の議論、③株主還元の見直し、の三点とのことで、コスモの決算書や中期経営計画等を見た上での私の個人的な意見としては、①反対・②反対・③賛成、です。それぞれもう少し詳しく見ていきます。
①製油所の統廃合を含む抜本的取り組み
コスモは前期間の中経の振り返りとして、生産量が販売量を下回る「ショートポジション戦略」を採り、製油所の稼働率が改善した、という点を成果として記載しています。少なくともここ数年は他の石油元売りに比べてコスモの利益率は高く、決算の数値を見てもある程度効率的な事業運営ができているのではないかと思われ、製油所のさらなる統廃合などの抜本的な改革は必要ないのではないかと思います。
②再エネ事業子会社(コスモエコパワー)の分離独立の議論
投資会社側は、「再エネの事業価値と、石油事業などを含むコスモの企業価値があまりにも違うため、再エネ事業をコスモ本体から分離独立させて上場することも議論すべきだ」という主張をしていますが、個人的にはこの議論をするのは時期尚早かな、と思います。コスモが主張する通り、再エネ事業はこれからきちんと収益を確立していく成長期にあり、現時点で分離することによるメリット・デメリットを中長期的に判断することは難しいと考えられるため、分離すべきか否かはもう少し事業基盤が確立した後の判断とすべきではないかと思います。
③株主還元の見直し
投資会社側は、「石油元売りの業界再編後、他の2社は総還元性向50%以上であったのに対し、コスモは総還元性向10%程度に留まっているため、株主還元の方針を見直すべきである」と主張しています。この点についてはコスモ側が歩み寄りを見せており、中経で「総還元性向60%以上」を打ち出していることから、今後は改善の方向に進むのではないかと考えられます。
以前のブログで「物言う株主の活動については基本的には賛成である」と述べましたが、今回の旧村上ファンドの提案は③を除いて多少無理筋かな、という印象です。それでもこのような提案を受けることでコスモの経営陣にも緊張感・危機感が高まりますので、中長期的な企業価値向上には寄与するのではないかと思います。果たして軍配はどちらに上がるのか、6/22の株主総会に注目したいと思います。
ちなみに余談ですが、私はコスモの中経を拝読して、業界の知見があまりない私が読んでも何がやりたいかわかり、内容も具体的であったので非常に好印象を持ちました。他社の中経では抽象的な表現が並んで、結局明日からこの会社の人たちは何をするんだろう…と思うようなものもありますので、それと比較するとコスモの中経は現在の経営陣がどのような点を優先的に解決すべき課題と捉え、どのようにして解決していくか、というところが明確であるように思いました。まあ、コスモのPBRが昨日時点で0.69倍、ENEOSが0.51倍、出光が0.52倍ですので、業界自体どうなのか…という点は気になるところですが、その辺りはまた別の機会に述べたいと思います。