「後継者難」による倒産が過去最多ペースという記事を見ました。概要としては、今年度の後継者難による倒産件数は2月までで437件となり、前年度の476件、過去最多だった19年度の479件に並ぶペースで推移しているとのことです。主な倒産の理由としては、代表者の病気・死亡が多くの理由に挙げられ、事業がそのまま立ち行かなくなったケースが多数を占めるということでした。事業承継の問題は、よくタスク管理で用いられる重要度と緊急度のマトリクス(アイゼンハワーマトリクスというらしいですが)で言えば、「重要度が高く、緊急度が低い」問題であり、代表者が元気なうちはすぐに何かとんでもないことが起こるわけではないため、ついつい足元の問題に気を取られて後回しにしがちですが、代表者に何かアクシデントが起こった場合には、緊急度がものすごい勢いで上昇し、一気に会社存続の危機となる可能性も大いにありますので、やはり入念すぎるぐらい入念に準備しておくべきなのだと改めて思いました。
さて、弊社は後継者難の会社に後継者の人材を紹介しているわけですが、後継者となる人に一番重要な要素は何かと聞かれたら、「やる気があること」と答えます。やる気があれば事業・会社をよりよくするために何をすべきかを常に考えますし、もし自分に足りないことがあれば自主的に勉強して、自然に身に付けて成長していくと思うからです。以前サイバーエージェントの藤田さんが、自社の強みを「やる気のある社員が多いこと」とおっしゃっていて、最初に聞いた時は当たり前じゃん!と思っていたのですが、今になってみるとまさにその通りで、非常に深いなあと感心してしまいます。そして私が依頼を受けて後継者候補の人材探索を行う場合、候補者として応募してくるのは皆さん間違いなくやる気がある方です。ただしここで私が重要だと思っているのはやる気の方向性で、単に「社長になりたいから」「キャリアアップしたいから」「お金がいっぱいもらえるから」という私的な欲求から来るやる気ではなく、「この会社のために、この事業を成長させるために、この人たちのために」というようなある種きれいごとに近い、一般論ではなく個別具体的な事情から来るやる気であることが重要です。もちろん私的な欲求もモチベーションのエンジンになるため重要だとは思うのですが、それだけだと辛い状況が訪れた時に耐えられないような気がしていて、「この会社の社長をやろうと決意する理由」というところが個別具体的であればあるほど、社長と後継者、会社のストーリーが深いものになり、いい事業承継の形になるという印象です。このいい意味でのやる気がある方であれば、「この会社・事業を成長させるために必要なことは何か」という観点で意思決定をしますので、足りないことがあれば他の人の力も借りて、どんな手を使ってでも埋めようとするでしょうし、そのような必死な思いは本人が敢えて口に出さずとも社員に伝わって、社員の中にもどんどん協力者が増えていくように思います。もちろん社長ともなればやる気だけあってもどうにもならないのですが、そのような蛮勇とでも言うべき根拠のないやる気ではなく、経験や実績、価値観に裏打ちされた根拠のあるやる気であれば、それさえあれば多少のスキル不足などは簡単に埋まるというのが私の考えです。
ちなみに後継者紹介を検討している会社に行くとまず言われるのは、「うちの会社の社長やりたい人なんかいないでしょ」という言葉なのですが、恐らく想像されているより「社長をやってみたい」と思っている人の数は何倍も多いと思います。「100%の確率でいいやる気のある方をご紹介できます!」とは言えませんが、想像されているよりはずっといい後継者に巡り合える確率は高いと思いますので、親族内・社内で後継者がいない場合はすぐにM&Aを考えるのではなく、ぜひ外部から後継者を招聘するという選択肢もご検討いただければと思います。