今日からプロ野球が開幕しましたので少し遅きに失した感がありますが、やはりWBCの話は少ししておきたいと思ったので、今日はWBCについて述べたいと思います。結果はご存じの通り見事な優勝で、私はリアルタイムで見ていたのは準決勝のメキシコ戦だけだったのですが、最終回の大谷選手のツーベースの後のベンチに向かってのパフォーマンスは本当に鳥肌が立ちました。吉田選手の同点スリーランも凄かったですし、村上選手のサヨナラタイムリーも興奮して思わず声が出ましたが、一番はやはり大谷選手で、なかなか表現が難しいのですが「ヒーロー感」が物凄いなと感じ、メキシコ戦が終わった後は、本当に久しぶりに「いいもの見たなー」と心の底から思いました。
さてここからは若干仕事の話とも絡めていきたいのですが、私が今回のWBCで非常に注目していたのは「栗山監督のマネジメント」で、その理由は、「栗山監督が、今までの侍ジャパンの監督の中で一番選手時代の実績がない」からです。日本企業におけるマネジメントと言えば、山本五十六の「やってみせ 言って聞かせて させてみせ 褒めてやらねば 人は動かじ」という言葉が端的に表しているように、まず「やってみせ」なので、野球に限らず「プレイヤーとして結果を残した人がマネージャーになる権利を得る」ということが多いように思います。プレイヤーとして結果を残していない人がマネージャーになると、「あの人プレイヤーとして結果出してないのに何でマネージャーになるの?」という雰囲気が充満することがありますし、特に野球の世界はそもそも1軍の監督の椅子が12個しかないため、通常の会社と比較してもさらにプレイヤーとして実績を残した人が監督になる傾向にありますので、「選手時代の実績があまりない栗山監督がどのようなマネジメントをするのか」という点に非常に注目していました。
結果としては栗山監督は、日本ハム時代と同様に「選手に寄り添う」「選手のことを第一に考える」マネジメントで見事世界の頂点を掴み取りました。印象的だったのは、「ここまで自分のことを親身になって考えてくれる監督はなかなかいないので、監督のためにも頑張りたい」とモチベーションを上げている選手の声があちこちから聞こえていた点です。「あなたのことを思って言っている」という言葉はマネジメントの場面でしばしば用いられ、それが言葉通り本当に自分のことを思って言っているのか、その言葉を隠れ蓑にして自分を従わせるために言っているのかは、言われた本人は結構直感的に気づくものだと思いますが、少なくとも栗山監督は本当に選手一人一人のことを考えながら、それぞれの選手に適切な距離感を意識して、各人にカスタマイズしたコミュニケーションを取っているように見えました。栗山監督は既に引退された斎藤佑樹さんや杉谷拳士さんからも恩師として慕われるなど、日本ハム時代から選手に非常に慕われる監督であるように見えていたのですが、その要因の一つがこのきめ細やかなコミュニケーションにあるのだと今回のWBCを見て思いました。部下のレベルに違いはあったとしても、やはりマネジメントにおいて一番重要なのは、「部下のモチベーションをどうやって上げて、気分よく働いてもらうか」という点にあるのだと栗山監督のマネジメントを見て改めて思いました。
さて今日からプロ野球が開幕しました。近年ヤクルトの高津監督やオリックスの中嶋監督など、どちらかと言えば栗山監督的な比較的自主性を重んじるモチベーションマネジメントを行う監督が結果を残している中、今年から阪神の監督に就任した岡田監督がどのようなやり方をするのか個人的には注目しています。野球を見る目は間違いなく確かな監督ですので、どのようにして現代の選手とコミュニケーションを取ってモチベーションを上げていくのか、楽しみに見ていきたいと思っています。