以前このブログでも取り上げた日本電産の後継者問題ですが、社外から採用するのではなく社内で育成する方向に舵を切ったようです。社内に適任者がいれば、社外から採用する際の社風の不一致等のリスクは避けられる可能性が高まりますので、特に日本電産のような強烈な創業者がいる会社においてはその方がいいのではないかと思います。言うまでもないことですが、この手の育成教育については「何を教えるか」というコンテンツの問題よりも、「誰に教えるか」というパーソナリティの問題の方が圧倒的に重要ですので、「どうやって後継者候補を選ぶか」という点が非常に重要になってきます。日本電産では、候補者の同僚らの「360度評価」や「責任感」、「英語力」などの『社長10カ条』を満たしているかを基準に判断される、とのことで、社長10カ条の全貌は具体的に述べられていませんでしたが、「360度評価」「責任感」「英語力」という出てきた項目から察するに、何やら怪しい雰囲気だな…という印象です。
私が社長後継者候補を探索する際に、経営者の必要条件として何となくイメージしている項目は下記6点です。
①強烈な意志:「自分はこうしたい」という強い意志を持っている
②勇気:不完全な情報下やトレードオフの状況などの辛い場面で意思決定を行う勇気を持っている
③洞察力:本質を見抜く洞察力を持っている
④発想力:課題に対する解決策を思いつく発想力を持っている
⑤しつこさ:「地味なこと」を「長く」継続するしつこさを持っている
⑥ソフトな統率力:立場によるものではなく、経営者の人間的魅力等に裏打ちされた統率力を持っている
これは菅野寛さんの「BCG流 経営者はこう育てる」という本に書いてある項目で、個人的には一番しっくり来ているので、社長後継者候補を探索する際には、面談の中で何となくこの辺りの項目をお持ちなのかどうなのかということがわかるように質問しています。ちなみに私も経営者の端くれですので自己評価をすると、①②③は結構自信がありますが、④⑤⑥はあまり自信がありません。
なお菅野さんはこの本の中で、「経営者のスキル(上記6項目含む)は後天的に習得可能である」とおっしゃっていますが、個人的にはその点は反対で、上記6項目は「スキル」ではなく「センス」で、一般的に後継者候補となりうる30代以降の人材が教育を受けたからといって後天的に習得できるものではないと思います。例えば「強烈な意志を持つことが必要だ」と頭で理解するのと、実際に強烈な意志を駆使してビジネスに生かしていくことは全くの別問題で、頭で理解することは後天的にできても、強烈な意志を後天的に持てるようにすることは非常に難しいのではないかということです。「わかる」と「できる」は違うということかもしれません。この手のセンス系の能力は、もともと60点の人を教育により80点にすることはできますが、0点の人を80点にすることはできないと思っていて、それゆえに「いかに60点以上の人を探してきて教育するか」という点が決定的に重要だと思います。
日本電産は2023年4月に5人の副社長を選び、2024年4月にその中から社長を決めるということですので、今後も後継者選びの動向を注視していきたいと思います。
今回のブログで今年の更新は最後となります。また来年もできるだけ週一回ペースを維持して思うところを書いていきたいと思っております。少し早いですが、皆様よいお年をお迎えください。