今日プロ野球の現役ドラフトが行われました。昨年の現役ドラフトから大竹選手・細川選手が大活躍しましたので、「現役ドラフトやってよかった!」「球界が活性化された!」と激賞する雰囲気もありますが、個人的には12人のうちの2人なので、まあそのぐらいは出てくるかもな、という印象です。今年活躍した2人にしても、来年継続して結果を残せるかわかりませんので、来年こそ真価が問われる年である、という言い方もできるかと思います。前々からドラフトと新卒採用が似ていて、現役ドラフトと中途採用が似ているな、と思っていましたので、今日はこの辺りについて述べてみようと思います。
ドラフトと新卒採用が一番似ていると思うのは、「今までやってきていないことができるかどうかを、今までやってきたことをもとに推測する」という点です。野球の場合はアマチュアでの野球のプレーをもとに、プロで通用するかどうかを見極めるので、新卒採用に比べると見極めやすいのではないかと思うのですが、それでもドラフト1位でも活躍できない選手が大勢いる一方で、ドラフト下位入団であっても球史に名を残すような選手も出てきますので、プロのスカウトの目から見ても、なかなかその選手の将来像を明確にイメージするのは難しいということでしょう。一方新卒採用は「この人が仕事ができるようになるかどうかを、今までやってきた勉強や学生生活の活動をもとに推測する」という話なので、ドラフトよりもさらに見極めるのが難しいと思います。以前からお話ししている通り、この新卒採用という仕組みはガラパゴス化の最たるもので、どんどん本質とは違う方向に「茶番化」していっているように思えるうえに、この結果的に意識の低い学生に合わせていると言ってもいい悪しき横並びの風習が、意識の高い学生の出る杭を潰しているように思え、この新卒採用の仕組みが日本の生産性を低下させている大きな要因になっていると思われるので、早く通年採用に切り替えた方がいいように思うのですが、恐らくこれからもこの仕組みは当分続けられ、超抽象的な面接の話の果てに、途方もない数のミスマッチを生み出し続けるのだと思います。
一方現役ドラフトと中途採用が一番似ていると思うのは、「既に結果が出ている」ということです。両方とも今までに築いてきたキャリアがありますので、そのキャリアに裏付けがあるか、再現性があるか、ということを見極めるのは、ドラフトや新卒採用の時よりもはるかに簡単です。現役ドラフトの場合は環境を変えることにより成果を上げられるようになったのは12人中2人、すなわち6人に1人ということですが、これは中途採用でも同じような割合かな、と思っていて、野球と全く同じような環境はほぼありえないのですが、例えば今の会社で結果が出ていない人がほぼ同規模・同業種・同職種の会社に転職して環境を変えたとして、結果が出るようになるのは6人に1人ぐらいのものなのではないかと思います。すなわち「環境のせいで失敗する」ということはあまりなくて、ほとんどが「本人に原因があって失敗する」ということなのだと思います。野球選手も「巨人のプレッシャーに潰された」「ソフトバンクの巨大戦力に埋もれてしまった」「阪神のタニマチに悪影響を受けた」など本当なのかわからないものも含めて色々な話が出ていますが、もちろん例えば同じポジションにレジェンド級のレギュラーがいたなどの運の要素もあるものの、基本的に活躍する選手はどの球団にいても活躍すると思いますし、運も味方に付けながら上手に競争に勝ち残って結果を出していく、というプロセスそのものがその人の経験・スキル・人間性などが総合的に問われると思いますので、今のチームで結果を出せず現役ドラフトに掛かるほとんどの選手が、別のチームに行っても結果を出せずに終わる、ということになるのだと思います。野球選手に限らず、頭角を現す人というのは多少環境が悪くても、自助努力で環境を自分の追い風になるように変えながら、前進して結果を出せる人だと思いますので、今の環境で結果を出せていない人が、環境を変えて結果を出せるようになる確率というのは、何となくですが現役ドラフトと同じく6人に1人ぐらいのものなのではないかなーというのが個人的な意見です。
従って中途採用というのは、しっかりと求める人材像を具体化してどのような結果を出してきた人間を求めるかを定義し、求める結果を出してきたプロセスをトレースし、その根拠や再現性を整理して合否を判断すれば、新卒採用よりもはるかに精度の高い採用が可能となるはずです。そのような精度の高い採用を実現したいと考え、私は日々顧客・候補者と向き合っています。