損保ジャパンの白川社長が辞任する意向を表明しました。損保ジャパンは私の大学時代の部活の先輩が働いていることもあり、ビッグモーターの報道とともに注目していましたが、社長の辞任という形で決着を図ることになりました。本件も含めて最近ではSNS等の普及などにより、一般の方々の情報発信が可能となり、今までであれば明るみに出ることがなかったであろう企業の不祥事が次々発覚している状況です。今回の件で例えば損保ジャパンに勤めている私の先輩の生活がたちまち脅かされる、ということはないと思いますが、「大企業に入れば一生安泰」という雰囲気が確定的でなくなってきているのは事実です。そこで、今回は「大企業に勤めるリスク」という観点で思っていることを述べたいと思います。
「大企業に勤めるリスク」というと色々と思い当たるところがありますが、一つだけ挙げるとすれば、「社外で通用する経験やスキルが身につかない」ということです。よく「大企業の看板で仕事をしている」という話がありますが、これはもう少し砕けた言い方をすれば、「会社の名前だけで信用してもらえて、仕事ぶりがよくなくても仕事が取れる」「ネームバリュー等で周りの利害関係者と比較して強い力を持っているため、多少社内の道理を優先して無理筋の仕事をしてもまかり通ってしまう」というようなところでしょうか。この状況で上司に評価されるように円滑に仕事を進めようとすると、「社内の論理を優先し、社外(市場)のニーズを捉えようとする意識が薄れる」「よくない仕事ぶりでも仕事が取れてしまうため、自社・自分自身の仕事ぶりを批判的に省みる機会が生まれない」という弊害が起こり、結果として「社内で通用するスキル・経験のみが積み上がったつぶしの利かない人材が出来上がる」ということになります。もちろん大企業の中にも社外に出ても十分に通用する人材もたくさんいるのですが、このような方々は総じて仕事ができる方が多いため、その社内でも評価され出世していくことが多く、社外に出て転職するインセンティブが低いように思います。従ってミドル層以上になって転職市場に出てくる大企業出身の人材は、どこに行っても通用しないつぶしの利かない人材が一定数いるというのが私の印象です。
そしてこのような人たちに対して私が転職のアドバイスをするとすれば、一番は「プライドを捨ててください」ということです。「大企業に勤めていた」「大きな金額の仕事をしていた」「名だたる取引先と付き合ってきた」というようなプライドは、新天地では何の役にも立ちませんし、むしろそのプライドが邪魔をして、前いた会社と今の会社を比較して「前の会社と比較して今の会社はこの部分が整っていない」と文句を言ってしまうと、自分の立場がさらに危ういものになってしまいます。ミドルに差し掛かってからの転職は若い頃と比較して即戦力であることが求められますし、苦労することも多いと思いますので、そのような文句を言いたくなる気持ちもわかりますが、そんなことを言っていても何も解決しないので、ぜひプライドを捨てて、新しい会社の人に全てを教わる気持ちで、採用してくれた会社に感謝して仕事をしていただければと思います。少なくとも学校卒業時点で大企業に入れたということは、その時点ではその会社に見合う高いポテンシャルがあると判断された、ということなので、プライドを捨てて一生懸命仕事をすれば、必ずや転職先で一目置かれる存在になれるのではないかと思います。今はどんな大企業でもいつ窮地に陥るか全く予想できない時代ですので、そのような状況になった時に多くの選択肢を持てるよう、普段から「自分のスキルや経験は社外で通用するのか」ということを念頭に置いて仕事をすることをお薦めします。