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転職の魔王様

2023.08.11 人材紹介

「転職の魔王様」という転職エージェントを題材にしたドラマが現在フジテレビ系列で放送されています。テレビドラマの題材になる仕事をやるというのは、いかにも流行りに乗っている感じがして、「鶏口牛後」をモットーとしている自分としてはあまりいい気分ではないのですが、これだけビズリーチやリクルートダイレクトスカウトがCM打ちまくっていればドラマにもなるよな…とも思います。ドラマを全部見るのはさすがに時間がもったいないので、私は原作の小説を読んでみることにしました。小説を読んでみると、主人公の来栖嵐のキャラクターが皮肉屋で無愛想、思ったことをオブラートに包まずはっきり言う、というところなどが自分に似ていて、結構共感してしまいました。読了して思うところは色々あったのですが、一番は「自分の本音を本当の意味で理解することが大事だ」ということです。

この小説の舞台となる会社は「シェパート・キャリア」という名前で、「転職に迷える羊たちを支援する」という意味で名づけられたようですが、確かに私も日々転職希望者の方とお話しする中で、転職者の方の中には「この人迷ってるなー」という人も結構いるように感じていて、そう思う人の多くは「自分の本音を理解していない、あるいは何となく理解しているが言語化できていない」方であるように感じます。「自分の本音」というのは、就職活動の自己分析の時から理解するように促されるのですが、何と言ってもそれを促している日本の会社自体がほぼすべて建前をベースに成り立っていますので、「本音を押し殺して建前をベースにコミュニケーションを取ること」が社会人の最低限のマナーとして求められるため、「本当の意味での自分の本音」を理解できていない人が多いのもむべなるかな、というところです。私はこの「建前が求められる日本の風潮」というのが、生産性のない無駄な仕事を生み、社内における本質的な議論を妨げ、日本企業の成長を抑制している一つの大きな理由だと思っているのですが、この点は日本社会にべっとりと根付いている価値観ですので、なかなか払拭するのは難しいと思います。しかし、私は自分が接点を持つ候補者の方に関しては、せめて転職理由や転職で求めたいことだけでも本音で語ってほしいなと思い、できるだけ本音を見せていただけるように自分が思っていることや提案する案件に対する思いなどを率直に話すようにしています。その本音というのは、「人間関係が嫌で転職したい」「給料やポジションを上げたい」「有名な会社に入りたい」などできるだけ生々しいものがよくて、この点の本音がしっかりと理解できていれば、転職した後に多少辛いことがあったとしても、「自分がなぜ前の会社を辞めて今の会社に転職したのか」ということを思い出して踏ん張れるような気がするので、私自身が納得するまで色々な角度から質問するようにしています。

この他にも、「面接で作っている感じが伝わる人は、面接を通過しても入社してうまく行かなくなる」「安易に合わない候補者を入社させて、クライアントに【安物買いの銭失い】をさせるべきではない」「表向きは色々と綺麗事を言うが、結局会社は社畜が欲しい」「おかしいものをおかしいと声を上げ、行動を起こせる人は、必ずどこかで必要とされる」など、私が思っていながら言語化できていなかったことが書いてあって、非常に参考になりました。何より私が感心したのは、作者の額賀澪さんの上記のようなフレーズの巧みさです。私も日々コンサルタントとして、クライアントにポイントをわかりやすく伝えるためにどのようなフレーズを用いるべきか、という点に腐心していますので、自分が思っていたことをここまで明快に言語化できることにただただ驚き、やっぱり売れる作家の方は違うなーと感心した次第です。転職の魔王様2.0というのも最近出たらしいので、また読んでみようと思います。