私はお客様から「管理部長を紹介してほしい」というご要望を頂くことが多いのですが、管理部長候補の人材を探索する際には、総務・人事・経理・財務などの管理部門の経験をもちろん最重要視する一方で、「営業経験がある人材」を比較的好んで紹介します。その理由は、①マーケットイン的な発想を持っている人が多い、②中堅中小企業の管理部長はジェネラリスト的な能力が求められる、の二点です。それぞれについてもう少し詳しく説明します。
①マーケットイン的な発想を持っている人が多い
管理部門の方の中には社外の顧客を相手に仕事をしていないため、「相手が何を求めているか」というマーケットイン的な発想よりも、「自分が納得できるいいものを作る」というプロダクトアウト的な発想で仕事をする方がいる印象があります。そういう方は「管理部門の顧客である経営陣・従業員が何を求めているか」という点よりも、「いかに抜け漏れのない完璧な仕組みを構築するか」という点に仕事の力点が置かれる結果、「確かに抜け漏れは少ないのかもしれないが、経営陣・従業員が使いにくいと不満が出るシステムが出来上がる」ことがあります。
私も会社勤めをしていた頃に「もうちょっと使う人の立場に立って考えてほしいよな…」と思う仕組みに出くわしたことは一度や二度ではありません。管理部門の第一義的なミッションは、「早く確実に処理する」という点にあることは間違いないので、その点を追求することは必ずしも悪いことではないのですが、そこに「ユーザー満足度」という観点が少し入ることにより、仕組みの使いやすさが格段に向上することがあります。営業などのクライアントワークをやった経験がある管理系の人材は、その辺りのバランスが優れているような気がします。
②中堅中小企業の管理部長はジェネラリスト的な能力が求められる
私のお客様である中堅中小企業の管理部長は、総務・人事・経理・財務などの浅く広いスキル・経験が求められることが多く(もちろん深いに越したことはないのですが)、極端な例ですが経理一筋20年という方より、総務・人事・経理・財務をそれぞれ5年ずつやっていました、という方のほうが望ましい場合が多いです。そのため大企業の経理部長・人事部長などが、それぞれの業務に関する卓越したスキル・経験が求められるスペシャリストであるのに対し、中堅中小企業の管理部長は、総務・人事・経理・財務等のそれぞれの業務のポイントを押さえつつ、限られた情報の中で迅速かつ適切な意思決定をしていくジェネラリストであると考えられます。
従って、以前のブログに書いた「センス・スキル」の理論で言えば、大企業は「スキル」が、中堅中小企業は「センス」がより求められるのではないかと思います。営業の業務は比較的この「センス」が求められる場面が多いため、営業経験がある管理系の人材は「センス」を備えたジェネラリストである可能性が高いのではないかと個人的には思っています。
(なおこの点については、中堅中小企業が大企業ほど仕組みが整っていないがゆえに、個人の「センス」に依存せざるをえない、という側面もあると思っているのですが、それはまた別の機会に述べたいと思います。)
ということで管理部門一筋の方には結構失礼な持論を長々と披露してまいりましたが、私自身独立するまでに4回転職している超中途半端な何でも屋ですので、履歴書が汚れている男の戯言だと思って、ぜひ鼻で笑って聞き流していただければ幸いです。