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ポピンズ創業者会長・社長パワハラ疑惑

2023.11.25 その他

国内最大手のベビーシッター派遣事業や全国約300カ所の保育園の運営、介護事業などを行う株式会社ポピンズの創業者会長、その娘である社長にパワハラ疑惑が持ち上がっているとのことです。私も小さい子供を持つ親ですので、当然ポピンズの存在は知っていますし、実際に自宅の近所にもポピンズが運営している保育園があります。利用者として保育園・幼稚園を見ていて思うのは、「この業界は非常に労働環境が悪く、パワハラ関連の問題が恒常的に発生しているのではないか」ということです。
この業界ほど「経営」と「サービス品質」のバランスを取るのが難しい業界はないのではないかと思っていて、時間や手間という概念を無視すれば「サービス品質」を上げるためにやることは際限なくあるため、例えば園長や管理職の方が極端にプロダクト・アウト的な発想を持って、「(顧客が必ずしも望んでいない場合も多々あると推察しますが)自分の理想とする質の高いサービスを提供したい!」と考えると、そのしわ寄せは現場の先生たちに行ってしまい、質の高いサービスを提供するための製作物を作るためなどのサービス残業が横行します。また追い求めているものが「園長や管理職の方の理想」という非常に抽象的かつ感情的なものなので、ゴールが園長や管理職の気分であっちこっちに行ってしまって現場が混乱した結果、「理想とはほど遠い!」のような得てしてあまり論理的ではない感情に任せたパワハラなどが、通常の職場に比べて多く発生することが予想されます。
一方「経営」の方に極端に振ると、要は「コスト削減」の発想になり、「できるだけ従業員を減らして最低限のサービスを提供する」という方向性になりますが、そうなると思わぬ事故が発生し、一気に存亡の危機に陥る可能性があります。
そのため、経営側からすれば「無駄なことをやっている」、現場側からすれば「経営側がコストに重きを置きすぎて必要なサービス品質が担保できない」というようにそれぞれがそれぞれの立場から不満を持ち、立場が強い経営側がパワハラまがいのやり方で不満を押さえつける、というような図式なのではないかと思います。

ただし、今回告発があったのは経営側から本社の社員へのパワハラですので、どちらかと言えば「保育業界の特性に起因するパワハラ」というよりは、「オーナー企業の特性に起因するパワハラ」であるように思います。今回主に考えたいのはこちらのテーマで、私の顧客の大部分が中堅中小のオーナー企業であるため、特に人材を紹介する際に常にこの問題は考えざるをえないところです。ポピンズの会長も「やり手の経営者であるため、もともとはっきりものを言うタイプで、社員に対して常日頃からきつい言葉を掛けることもあった」とのことで、オーナー企業の社長は得てして白黒はっきりものを言う方が多いため、そのようなコミュニケーションに慣れていない方からすれば、「社長はいつも怒っている、パワハラだ」というように捉えられてしまうこともあると思います。個人的な価値判断の基準としては、その指摘をした人がその指摘をした動機が、心の底から「その人のため」「顧客のため」というのであれば、それはパワハラではなく「価値観の違い」であると思いますが、「自分のため」「自分の気分を害したため」というのであれば、それはパワハラであるということだと思います。ただし若い世代に行くにつれ、「(例え言う側に言う側なりの理があったとしても)理不尽に怒られること」に対する耐性はなくなってきていると思われるため、「価値観が違う」と言って自分のコミュニケーションのやり方に合わない人を切り捨てていると、誰も残らなくなってしまった、ということも起こりえますので、その点は留意する必要があります。

それにしても最近はこの手のパワハラ・セクハラのニュースが後を絶ちませんが、恐らく日本では昔から山のようにこのような話があって、今までは発信する手段がなく表沙汰にならなかったものが、今はSNSや文春砲など発信する手段が多少出てきたため、ニュースバリューがあるネタを中心に少しずつ出てくるようになった、というところだと思います。特に本件のような企業トップのこのような不祥事は、会社の存亡の危機にすら陥る可能性がある事案となりますので、トップに立つ人間は公私ともに、より一層襟を正して生活していかなければならないのでしょう。なかなか窮屈な時代になったなと思いますが、社長の皆様にはぜひ大きな心で、色々な価値観を受け入れることにトライしていただきたいと思います。