「オタク」というと最近は多少市民権を得てきたように思いますが、基本的には「マニアックな趣味に没頭している人」ということでマイナスなイメージがあるように思います。しかし私はオタクの人と話すのがわりと好きで、話していると楽しいなーと思うことが多いです。オタクの人は総じてインプットの量はすごいもののアウトプットの質が悪いため相手に伝わらない、もしくはインプットしているものが一般的に市場性・ニーズがなく、相手に求められていないものをアウトプットしてしまう、などの要因により、一般的にあまり認められないことも多いように思いますが、何しろインプットの量がすごいので、そのテーマについて質問すると色々な派生知識・予備知識が出てきますし、「なぜそのテーマに興味を持ったのか」というそもそものモチベーションについても、あっと驚くような理由が出てくることも多く、話していくと「この人深いなー」と思うことが多いので、私は仮に市場性・ニーズがあまりないテーマであっても、何かに没頭して詳しくなっている人は好きですし尊敬します。
そしてこのようなオタク気質がある人というのは、仕事においてもご自身が興味がある分野や業務が見つかれば、それを極めていく特性があるように思います。特定の分野に強みを持ちつつ、それ以外の分野についても広く浅く知見を有する「T字型人材」が求められるようになって久しいですが、オタク気質がある方の場合は、その特定の分野の強みが非常に深い「T字型人材」になる可能性が高いように思います。私は個人的には「T字型人材」の特定の分野の強みの質が非常に重要だと思っていて、強みの質が高い方はその強みを他の分野でも応用して、広く浅く知見を発揮すべき分野においても、それなりの質を担保できるように思います。わかりやすく言えば「営業はできるけど経理や総務ができない」という人は本当の意味ではあまりいないと思っていて、本当の意味で営業ができる人は、経理や総務も営業ほどではないにしても、営業における業務のポイントを応用して、抑えるべきポイントは抑えながらそれなりにできる、という人が多いように思います。オタクの方の場合は比較的何かに没頭する傾向にあるので、興味を持った分野の強みは膨大なインプットに下支えされた非常に質の高いものになる可能性が高く、その強みを生かして仕事をしていけば、いわゆる「仕事ができる人」になる可能性が高いのではないかと思います。ただし一点だけ、「没頭するものの市場性・ニーズ」という観点は持っておいた方がよく、あまり市場性・ニーズがないスキルや知識を伸ばしても、それが強みとして活用できるフィールドが少ない可能性がありますので、「興味が持てる分野かどうか」という観点とともに、「市場性・ニーズがある分野かどうか」という観点を踏まえて上でスキルや知識を伸ばすことが重要なのではないかと思います。
オタクの人と話していると、改めて「インプットの重要性」に気づかされます。「自分は果たしてこの人のように、高い熱量を持って雄弁に語れるものがあるだろうか」という思いを持つと同時に、「このぐらいの高いクオリティで話せるネタを持つべく、本やネット、YouTubeなどの動画はもちろん、日々の業務の中で学ぶ事柄について、アウトプットを明確にイメージしながらインプットを行わなければならない」という思いを新たにします。逆に言えば、「自分が普段仕事の中で話している言葉は、常にアップデートされて研ぎ澄まされているのか、使い古したパターン化された言葉を何となく発して、自分の中で新鮮さがなくなっていないか、陳腐化していないか」という危機感を持つこともあります。そういう意味でもオタクというか、何かにこだわりを持った人とお話しすることは、自分に大いなる刺激と反省をもたらしてくれるので、自分が成長するきっかけになるように思います。これからもより色々なジャンルのオタクの人とお会いしてお話をしたいですし、オタクの方から話していて面白いと思ってもらえるように、自己研鑽を続けていかなければならないと改めて思っています。