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「30代中盤からは、チーム内で話さない方がええ」

2023.09.30 その他

タイトルの言葉は、ラグビー日本代表の堀江選手のものです。ラグビーに限らず、最近の日本代表は野球の栗山監督、サッカーの森保監督など「選手の自主性を尊重する」という方針になってきているように思います。冒頭の言葉を会社に置き換えるならば、「社長は社内で話さない方がええ」ということになるかと思いますが、日本のトップクラスの選手が集まっている日本代表であればとにかく、中小企業においては「自主性を尊重する経営」を行うのは非常に難しいと個人的には思っています。

会社の経営を①会社の進むべき方針を示す、②①で示された方針に従って、それが成果として現れる業務レベルにまで落とし込む、という2つのフェーズに区分した場合、「自主性を尊重する経営」というのはいわゆるボトムアップ式で、社長が①のみ示し②は部下に任せる、もしくは部下に思い思いに②をやらせて、社長がそれを取りまとめて①を打ち出す、というようなイメージになるかと思いますが、どちらの場合も部下が②を具現化できなければ失敗するわけなので、優秀な部下が潤沢にいる日本のトップ企業であればいざ知らず、人材難に悩む中小企業においては、部下の自主性に任せることは理想ではあっても、現実的には正直厳しいような気がします。従って中小企業においては、①及び②の大部分のところを社長及び上位マネジメント層で対応せざるをえないことになりますので、その結果社長を含む一部の人材が「余人をもって代えがたい人材」ということになり、その他の社員は「指示待ち人間」になるという構図が出来上がるのだと思います。

たまに中小企業の社長から「社員に自分の意見ややりたいことがあれば積極的に進言してほしいとメッセージを発しているのだが、社員が指示待ちで自ら動こうとしない」という半分愚痴のような悩みを聞くことがありますが、少なくとも40歳を過ぎた方が急に人が変わったように自ら主体的に動くようになることはまずないので、「指示待ちの態度は改善されないものである」という前提で考えた方がいいと思います。あとは社長が、「本気で心の底から進言してほしいと思っているか」という問題もあります。口ではそう言っていても、実際に意見された場合は受け入れられず、耳が痛いことを言う人材を遠ざけ、イエスマンばかりを重用する、ということは比較的どこの会社でも起こっていることですので、「言うは易し、行うは難し」なのだと思います。つまり「自主性を尊重する経営」というのは、「部下の意見をフラットに受け入れ、裁量を与えてくれる器の大きい社長・マネジメント陣」と、「自ら主体的に動く積極性と、やりたいことを具現化して成果を出せる部下」が両方いてはじめて成り立つということになりますので、なかなかハードルが高いのではないか、というのが私の意見です。

もっともこの話は「トップダウンか、ボトムアップか」という二者択一の話ではなく、「どのあたりのバランスが自社にとって最適か」という観点で、中小企業は恐らくトップダウン寄りのマネジメントをせざるをえないところが多いのではないかと思う、ということです。この辺りのバランスをどのように取って、誰にその舵取りを任せるのか、というところはマネジメントの難しいところの一つであり、「こうすればいい」というパターン化・言語化が難しいためスキルとして定義することが難しく、多分にセンス寄りの領域になるのではないかと思います。私が「経営者には先天的なセンスが必要だ」という理由の一つは、今回の話に出た「いい塩梅でバランスを取れること」「人材を適材適所で登用すること」というのが、上手に経営を行うための重要な要素であると思うためです。私がお世話になっている会社の社長さんで、この辺りの対応が絶妙だなーと思う方がいらっしゃるので、今度改めてこのテーマについて話してみようと思います。