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ユニクロ 新社長に新卒プロパー社員を登用

2023.09.23 その他

ユニクロの新社長に44歳の新卒プロパー社員の方が就任したというニュースが入ってきました。一説によるとこのまま親会社のファーストリテイリングの社長にも柳井社長の二人のご子息を差し置いて選ばれるのではないか、ということですが、個人的には大賛成です。私は外部からの後継者紹介とM&Aを事業としてやっていますが、事業承継の優先順位としては「社内後継者登用>社外後継者招聘>M&A」だと思っているので、今日はこのテーマについて述べたいと思います。

まず「社内後継者登用>社外後継者招聘」という点ですが、社内に後継者となりうる人材がいるのであれば、社外から招聘するより間違いなくそちらの方がいいと思います。社内の後継者の場合、社外から後継者を招聘する際に懸念点となる、①仕事ぶりや実力がわからない、②社風にマッチするかどうかがわからない、という点を既にクリアしているからです。この2点はなかなか面接だけで見抜くのは難しく、例えば①であれば仕事での実績を因果関係や数字の推移等を含めてできるだけ具体的に聞く、②であれば会社側から自社の強みだけではなく課題や弱みを積極的に開示して、お互い本音で話しやすい雰囲気を作る、など多少は工夫できるところはありますが、基本的には会社も候補者も「採りたい」「入りたい」という気持ちで面接を行うため、ミスマッチとなる要素に目を瞑ってしまいがちになります。その点社内の方であれば仕事の実力は皆が知るところでしょうし、ある程度長い期間その会社で働いているため、社風とのミスマッチという点も社外の方から比べると明らかにリスクが低いものと思われます。そのため私はもし後継者を紹介してほしいと言われた際には、必ず「社内で後継者となりうる方がいるのであればまずその選択肢を検討した方がいいですよ」とお伝えしています。

次に「社外後継者招聘>M&A」という点ですが、その理由は「M&A後に来る新社長がその会社にマッチする可能性は極めて低い」からです。M&A後に来る新社長は、買い手が事業会社の場合は親会社から送りこまれてくる可能性が高いですが、恐らく上場企業が多いであろう親会社の部長クラスの人材が、売り手である中小企業の経営ができる可能性は低く、もしその社長本人が左遷と捉えていた場合にはモチベーションが低い可能性もあるため、マッチする新社長が就任する可能性は低いと考えられます。またファンドなどの金融系の買い手の場合は、そもそもその事業に精通していない可能性が高く、事業に精通していない人たちが選んできた新社長は、言うまでもなくマッチする可能性が低いのではないかと思います。もちろん売り手の社長の一義的な目的が、「M&Aによりキャピタルゲインを得たい」というのであればM&Aは有力な事業承継の手段だと思いますが、「会社を自分の代で終わりにするのではなく永続させたい」と願うのであれば、M&Aより社外の人であっても自分で後継者を選べる方が永続の可能性が高まるのではないかと思います。

ちなみに日本の大企業の多くは新卒プロパー社員が社長になっていますが、これは「社長になるための訓練をしていない人が、サラリーマンの上がりのポジションとして社長をやる」という別の問題をはらんでいるように思います(今回のユニクロの場合はそのようなことはなさそうですが)。この点についてもまた別の機会に述べてみたいと思っています。