最近外資系企業にお勤めの方と面談する機会が多いのですが、外資系企業の意思決定は非常に明快だなーと思うことがよくあります。細かい個別の事例の話をすると企業名が明らかになる可能性があるので詳細は避けますが、「ある物事を行う場合のメリットはこれ、デメリットはこれ、それぞれの金額インパクトはこれぐらい、総じて7-3でメリットが上回ると思うのでとりあえず走り出しましょう、やっていく中で重大なデメリットが出てきたらまた話し合うから早めに言ってねー」のような感じで、意思決定が「簡潔・迅速・論理的・定量的」で素晴らしい!と思いました。
と同時に思ったことは、「これは日本の、特に大企業は絶対勝てないよな…」ということです。日本企業が意思決定をする場合、上記と真逆のことをやるでしょう。まずメリットとデメリットをできるだけ精緻に漏れのないように挙げようとするでしょうし、そこにはどちらかというと定性的な項目が並ぶと思われます。そして挙げられたメリットとデメリットをもとに、おおよそ論理的ではない情緒的な話し合いが行われ、デメリット・リスクが0に近づいた案件が、幾重もの稟議を経て承認され実行される、というイメージでしょうか。個人的に一番問題なのは「意思決定が遅い、決めない」という点だと思っていて、これだけ仕事のスピードが上がり、模倣するための手掛かりも簡単に集められる時代において、「意思決定が遅い、決めない」というのはやらずして負けが確定してしまう最悪手であるにも関わらず、市場などの社外ではなく社内の事情を優先して意思決定が遅れる、というシチュエーションが日本企業では比較的頻繁にあるのではないかと思います。
私はこの話を聞いて、名著「失敗の本質」にも似たようなことが書いてあったような気がするなーと思い読み返してみると、やはり「あいまいな戦略目的」「主観的で帰納的な戦略策定(空気の支配)」「人的ネットワーク偏重の組織構造」「属人的な組織の構造」「プロセスや動機を重視した評価」など、現代の日本企業にも共通する要因が出るわ出るわ…という感じでした。戦争の頃から表出していた日本の組織の本質的な課題は、敗戦という手痛い失敗を経てもなお根強く日本社会に残っているのだと改めて感じました。正直に申し上げて、これらの課題の根本的な解消を大企業などの今の既得権益層に求めることは非常に困難だと思うので、新たに勃興する中小企業に期待せざるをえないのか、という印象です。私は非常に器が小さいので、「この根本的な課題をどう解決していくか」という方向ではなく、「この根本的な課題が解決されない前提でどう立ち振る舞うか」という発想になってしまいますが…。