サクサホールディングスが実施した中小企業の経営者調査によると、「DXに取り組んでいる」との回答は約27%だったとのことで、さらにその内訳は下記です。
・DXに取り組んでいて、成果が出ている:2.3%
・DXに取り組んでいて、ある程度の成果が出ている:12.8%
・DXに取り組んでいるものの、あまり成果が出ていない:8.7%
・DXに取り組んでいるものの、全く成果が出ていない:3.2%
すなわち「DXに取り組んでいて、成果が出ている」のは全体の15%であり、「DXに取り組んでいる企業のうち、成果が出ている」のは約55%という見方もできます。
また「DXでどんなことを実施しているか」という質問に対しての上位の回答は下記です。
・書類の電子化:49.2%
・顧客管理(名刺管理含む):47.5%
・経費精算:40.7%
・情報セキュリティ対策:40.7%
・電子契約・決裁:33.9%
・通話のスマホ活用:33.9%
このアンケート結果を見て個人的に思うところとしては、①「DXで事業を抜本的に改革する」ということはほとんどの会社で起こりえない、②とはいえDXに着手する会社が少なすぎる、ということです。それぞれもう少し具体的に述べていきます。
①「DXで事業を抜本的に改革する」ということはほとんどの会社で起こりえない
DXは「デジタルトランスフォーメーション」という大袈裟な名前が示す通り、あたかもほぼ全ての企業において、抜本的な事業改革をもたらすものであるかのように言われていますが、実態としてはほとんどの会社でそのようなことはありえない、ということです。DXで実施していることも「書類の電子化」「顧客管理(名刺管理)」など事業を抜本的に改革するようなものとは言えず、DX前にも言われていたいわゆる「IT化」の域を出るものではありません。そもそもDXの専門家と言われる人たちですら、夢物語ではなく現実的な「DX化のゴール(どのような状態になったら「DX化が完了した」と定義されるか)」が明確に見えているとは思えませんので、この結論は初めからわかっていたことではあるのですが、DXが経営のアジェンダ化されておよそ5年ほど経っての現状がこの状況ですので、DXの専門家たちがイメージするゴールを10とすれば、1も達成されずに終わる、というところが現実ではないかと思います。
②とはいえDXに着手する会社が少なすぎる
個人的にDX化のゴールはIT化と変わらず、「個社ごとにITを使うことで業務の中で効率的にできる部分のみ置き換えていく」というところだと思っているのですが、DXで実施している項目から推察するに、現状はその点すら進んでおらず、例えば電帳法の対応で求められるため「書類の電子化」「経費精算の電子化」を行う、などの法的に求められるものに仕方なく対応している、という動機がメインだと思います。恐らく非常にアナログな業務のやり方が踏襲されていて、ITの力を使えば業務が効率化できる要素が大いにある中小企業がほとんどだと思いますので、「DXで業務改革だ!」と大きく振りかぶる必要はありませんが、「ITを使って業務効率化できるところはないか」という観点で業務を見直し、効率化を図る努力をしていくべきではないか、とは思います。
ただ一つだけ認識しておくべきなのは、「DX化で抜本的に業務を改革し、劇的に生産性が改善している企業も間違いなくある」ということです。昔「IT革命」という言葉がありましたが、ITというツールは上手く使うと業務の生産性を劇的に改善する可能性を秘めたものだと思うので、DX化の波に乗って他社を出し抜いて勝っている企業も実際にあります。重要なことは「DX化」というキーワードを自社なりに咀嚼し、ITというツールとどのように付き合っていくべきか整理して、どのように自社の事業に生かしていくかを具体化するということだと思います。とはいえ一足飛びでいきなりばしっと網羅的に整理することは難しいと思いますので、まずは②に書いたように、手元でできる効率化から第一歩を踏み出すのがいいのではないか、というのが私の意見です。