「サクマ式ドロップス」でおなじみの佐久間製菓株式会社が廃業することになった、というニュースを見て、私は恐らく他の人に比べても非常に驚いたのではないかと思っていまして、その理由は佐久間製菓が弊社の近くに本社を構えており、わりと頻繁に本社の横を通っているためです。私も初めて佐久間製菓の本社の存在に気づいた時には、「おーこれがサクマドロップスの佐久間製菓の本社かー」と若干の感動を覚えるとともに、久しぶりに「有名な会社の本社が普通に歩いていて見つかるなんて、やっぱり東京すごいなー」と思った記憶があります。
ところが本件で私がさらに驚いたのは、「さくま製菓」には、「サクマ式ドロップス」を作っている「佐久間製菓」と、「サクマドロップス」を作っている「サクマ製菓」の二社があるということです。恐らくほとんどの方が「サクマ式ドロップス」と「サクマドロップス」の違いを認識していないのではないかと思っていまして、私も当然ながら全く認識していませんでした。そこで少しこの二社について調べてみました。
信用調査会社のデータによると、二社の売上高・従業員数は下記です。
・佐久間製菓:売上高約15億円、従業員数101名、一人あたり売上高約1,500万円
・サクマ製菓:売上高約40億円、従業員数130名、一人あたり売上高約3,000万円
食品メーカーの一人あたり売上高は大体2,000万円ぐらいあるといいかなーという感覚なので、佐久間製菓の売上高でも何とかならないかなーとも思うのですが、ドロップはそんなに付加価値が高い製品ではなく粗利率が低いと思われるので、この売上高では厳しいのかと妄想しました。
同じような製品を看板としているこの二社でここまで売上高に差があることに驚きましたが、一番の違いは、佐久間製菓がサクマ式ドロップス一本足打法であるのに対し、サクマ製菓はサクマドロップス以外にも、「いちごみるく」や「のど飴」などのヒット製品があり、近年は「太田胃散のど飴」「ポンジュースキャンデー」「コメダ珈琲キャンデー」などのコラボ製品が人気を博しているとのことでした。改めて、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)でいうところの「金のなる木」がお金を稼いでいる間に、新しい「花形」を作っていかなければならない、という経営の基本が大事であることを、この二社の比較が教えてくれているような気がします。
そしてもう一つ興味深い事実があり、佐久間製菓とサクマ製菓は、「サクマ式ドロップス」の商標取得を巡って裁判になり、佐久間製菓が勝利して「サクマ式ドロップス」を販売することになり、敗れたサクマ製菓は二番煎じで「サクマドロップス」を販売することになったということです。ここからは私の思いっきり妄想ですが、「佐久間製菓に負けた」という事実が、サクマ製菓の会社の根底にあり、「一つのヒット商品に安住するべきではない」という感覚を会社として持っているからこそ、次々とチャレンジを続けヒット商品を生み出せているのではないかと思いました。まさにスラムダンクで山王の堂本監督が言っていた、『「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる』を地で行っているのかなーと妄想していたところです。これは会社のみならず個人にも当てはまることで、私も自分が大きく成長できたのは負けた時、失敗した時に大きく落ち込んで、それを乗り越えた時のような気がします。今後また逆境に追い込まれた時も、「これは自分が大きく成長できるチャンスだ」と考え、前向きに乗り越えていかなければいけないなと、この事例をもとに改めて思いました。